「共同声明」への署名のお願い

 研究者(大学院生を含む)の立場から、以下の「共同声明」に賛同して下さる方をひろく求めています。賛同して下さる方は、下記の連絡先にメールかFAXでお名前とご所属をご連絡下さい。署名は10月末まで集め、11月初旬に法務大臣に提出する予定です。よろしくお願い申しあげます。
(なお、9月2日付「朝日新聞」朝刊の社会面で、今回の集団出頭について、大きく取り上げていますので、ご参照ください。)

              1999年10月18日

呼びかけ人:駒井洋(代表、筑波大学)、伊藤るり(立教大学)、稲葉奈々子(茨城大学)、梶田孝道(一橋大学)、高鮮徽(鹿児島大学)、近藤敦(九州産業大学)、佐久間孝正(東京女子大学)、樋口直人(徳島大学)、山脇啓造(明治大学)、渡戸一郎(明星大学)

連絡先:渡戸一郎 Fax: 042(591)9236 (明星大学社会学科)
    山脇啓造 e-mail address: yamawakik@anet.ne.jp

 

超過滞在外国人に「在留特別許可」を求める研究者の共同声明

去る9月1日、超過滞在の外国人5家族19名と単身者2名の計21名が、「在留特別許可」を求めて、東京入国管理局に集団出頭しました。これらの出頭者は全員、日本での生活の継続を強く望んでいますが、「不法滞在者」として無権利状態に置かれたままでは、将来的に正常な生活を確保できる展望をみいだせないことから、熟慮の末、意を決して、日本における合法的な在留が認められることを求めたものです。

今回の出頭者の成人たちは「出入国管理及び難民認定法」違反の超過滞在者ですが、その他の犯罪歴は一切ありません。また、職場で勤勉に働き、納税義務を果たしてきました。こうした人々を強制的に退去させることは、日本にとって大きな損失といえます。何より彼らが日本社会に適応し、すでに生活基盤を形成するとともに、善良な「市民」として日本社会との絆を築き、職場や地域社会の実質的な構成員となっている事実は、きわめて重く受けとめる必要があります。さらに、今回の出頭者には、日本で労災に遭い、退去強制されると、治療の継続が困難になる人も含まれています。

また、出頭者のなかには、保育園児から高校まで8名の子どもたちが含まれています。子どもの権利はいかなる場合にも優先的に擁護されなければなりません。子どもたちは自らの意思で超過滞在者になったわけではなく、日本政府が批准している「子どもの権利条約」を踏まえた措置が必要です。特に子どもたちの場合、日本の保育園や学校で学び、日本語しか話せず、また日本人の子どもたちと親しい友人関係を築いているという意味で、日本社会に実質的に統合されており、それだけに日本での教育や生活の継続を強く望んでいます。こうした子どもたちが退去強制になれば、人権上の問題がきわめて大きいことは、明らかです。例えばフランスでは、国内で学校教育を受けている未成年の子どもに対して、退去強制が行われることはありません。これは学校教育をつうじて、フランス社会と確固たる絆を築いているという事実が重んじられるためです。また、これらの子どもの親が非正規滞在の場合にも、子どもが親とともに生活する権利が優先されるため、親の退去強制が行われることもありません。

日本の場合は、日本人の配偶者か日本人の実子の養育者以外には、超過滞在外国人の「在留特別許可」は認められていないのが現状です。確かに、今回の出頭者たちはこの枠組みから外れています。しかし、歴史的にみれば日本政府には、「不法入国」してきた韓国・朝鮮人に対して、彼らの日本社会への定着を根拠に、人道的な見地から、在留特別許可を認めてきた多くの前例があります。とくに、出稼ぎ目的の人々に対しても、その生活実績を認め、在留特別許可を与えてきたことは、重要な前例であり、今回の出頭者たちに対しても同様の措置をとることが強く望まれます。

私たち研究者は、以上の観点に立ち、今回の集団出頭者たちが日本での健全な生活を送ることができるよう、日本政府が一日も早く、「在留特別許可」を与えることを強く訴えます。

1999年11月 日