2000年6月上旬の労働関連の記事

6/10 ILO、母性保護新条約案(日経夕刊):ILO総会の審議会で働く女性の母性保護を目的とした新条約の文案が固まり、その中では出産休暇を14週に拡大、休暇中の金銭給付は就業時の2/3などを最低条件とするとともに、母性が雇用差別につながらないよう求めている。

6/10 人材派遣料の二極化鮮明(日経):人材派遣市場での二極化が鮮明となってきており、専門性の低い一般事務職では一時間当たり2000円を切るケースが増えているのに対して、金融関連分野では2200円以上で安定し、一部では2500円を上回るケースも出てきている。

6/9 パート観変えよう(日経夕刊):正社員とパートタイマー間の処遇格差是正を求めた「パートタイム労働に係わる雇用管理研究会報告」について、労働省は概要をまとめた小冊子を10万部作り、企業などへの普及活動を始めた。時間比例の均衡待遇を行うフェデラルエクスプレスの例などを取り上げ、均衡処遇への道筋を考察している。

6/9 夏休み、平均7.5日(朝日、日経):労働省がまとめた「夏季連続休暇の実施予定調査」によると、今年の企業の夏休みは平均7.5日で昨年の7.4日より若干高くなった。

6/9 花王、EVA連動ボーナス(日経):花王は、日本企業としては初めて全社員を対象にEVA(経済付加価値)に連動するボーナスを支給する。

6/8 女性総合職、全体の3.5%(朝日、日経):21世紀職業財団の調べによると、企業で働く総合職の女性は3.5%と低く、その6割強が昇進などで男女差があると感じているということが明らかになった。

6/8 不法滞在者、まじめな働きに報いて(朝日):警察統計のトリックによる不法滞在者は犯罪の温床というような言説がまかり通っている中、もはや日本社会に融け込み、まじめに働いている超過滞在者が多くいることをあるフィリピン人家族を取り上げて紹介している。

6/7 米ネット、雇用65万人創出(日経夕刊):テキサス大学の調査によると米国のインターネット関連産業は、新たに65万人の雇用を生み出し、従業員数も前年比36%増の247万人となっていることが明らかになった。

6/7 留学生、不況で採用低調(朝日):政府は専門的・技術的な労働者は外国人であっても「積極的に受け入れる」としているが、本当にそうなのであろうか。アジアから来た留学生たちの就職事情を通してその閉鎖性を主張している。

6/7 村田製作所、業績連動の部門別賞与(日経):村田製作所は今夏のボーナスから課長職以上の管理職に所属部門ごとの業績を支給額に反映する制度を導入する。

6/7 ネットで新卒求人情報(日経):労働省はインターネットを使い、大学、短大、専修学校の学生が自宅のパソコンから新卒者の求人情報を検索できるシステムを構築する方針を打ち出した。

6/6 研修・技能実習制度、建前と実態のズレ鮮明に(朝日):開発途上国の人たちに技能を修得してもらおうという国際貢献の名の下に、3K現場(時として技能などいらないような職種)で外国人労働者を安価かつ無権利で使うことを可能にしている外国人研修制度と技能実習制度。その実態を明らかにしている。
記事自体はしっかりしているが、JIL(日本労働研究機構)の研究員佐野哲のコメントはまさに噴飯もの。糾弾にさえ値する。安価に、しかも必要なときに労働力たる外国人労働者を集めて期間がくれば帰国させられるこの方式はうまく機能おり、一部で起こっている人権問題は仕方がない、とのたまう。翻訳すれば<外国人研修生制度は、日本人が働きたがらないところで、外国人労働者を連れてきて、使いたいように使え、そのうえ賃金も安くあがる。奴ら外国人はちょっと目を離すと不法滞在や定住化して問題を引き起こすのだから、権利を与えるなんてとんでもない。神の国たる日本では奴らは労働者や人間として平等に扱われる資格さえない>ということだ。
もはや技術・技能の研修という建前さえ一言も触れることなく、政策当事者(JILは労働省の外郭団体)に近いところの研究者が露骨にその本音を語っているのだ。こいつが同じ世代の労働研究者かと思うと反吐がでる。留学生が彼のコメントを読んだらどう思うのだろうか。異国の地で権利なき労働に従事させられ、恩着せがましく研修だと言われ、最賃以下の賃金しか与えられない「労働者ならざる労働者たち」。JILでアルバイトしていた某A君があまりの問題感覚のなさに喧嘩になったと言っていた研究員とは、コヤツのことかとふと思ったりした。

6/6 女性の深夜労働を考える(朝日):女性の深夜労働や残業を規制してきた労働基準法の女子保護規定がなくなり1年、仕事の機会が増えるとともに、家庭との両立が難しくなっている状況を取り上げている。深夜勤務のおかげで男性に気兼ねすることがなくなり「女性も働きやすくなった」というトヨタのラインで働く女性と、「法改正は男性の働き過ぎを抑えず、女性が男性並になってしまった」という金融関係の事務職を紹介している。

6/6 国大協、女性大学教員10年で20%へ(朝日):国立大学協会は「ポジティブ・アクション」の一環として、これから10年で女性教員の割合を20%に高める目標を定め、各大学に保育施設の充実などを求めていく。

6/6 来春採用、3年ぶりに増加へ(日経):労働省が発表した労働経済動向調査によると、来春の高校・大学の新卒採用に関して今春実績より「増加する」と答えた企業が「減少する」と答えた企業を3年ぶりに上回り、同省では新卒超氷河期は脱したとみている。

6/5 ナイキ、工場労働条件ネットで公開(日経夕刊):米国内外の人権団体から「アジアや中南米の工場で不当に安い労働を雇用している」と批判されてきたナイキは、約700の工場の労働条件や作業環境について月次で外部の監査会社が調査し報告書を作り、同社のホームページで公開を始めた。現在は北米の53工場のみだが年内にも世界約700の工場に増やす。

6/5 増える多胎児、仕事の両立で母親大変(日経夕刊):不妊治療の影響などで最近双子、三つ子といった多胎児の出産が増えている。仕事を抱えた母親の多胎児養育の苦労を紹介している。

6/4 男女雇用差別是正、NY大で訴え集会(日経):男女賃金差別などの裁判を起こしている大阪の女性グループが、国連特別総会「女性2000年会議」に非政府組織として参加するのに合わせ、米ニューヨーク大学で日本企業の男女差別を取り上げたワークショップを開く。また帰国後、17日に大阪府立女性総合センターで報告会を開く。

6/3 大卒求人率、2年ぶりに改善(日経夕刊):リクルートリサーチがまとめた「2001年卒大卒求人倍率調査」で、大卒の求人倍率が2年ぶりに改善したことがわかった。インターネットビジネスの拡大を受け、情報技術関連の人材で不足感が強まっている。

6/3 ソニー、インドネシア工場で職場放棄(朝日):ソニーのインドネシアの生産拠点が1カ月以上にわたって機能麻痺の状態に陥っている。同社が立ち作業を導入しようとしたのに対して、労働組合が反発し3日間のストライキを行い、それ以後も職場放棄が続いている。インドネシアではスハルト独裁体制の崩壊で、自由化された組合運動により労使紛争が頻発している。

6/3 米失業率、4.1%(日経):米労働省が発表した5月の失業率は、民間の雇用が11万6千人減少したことを受けて、4.1%と前月比で0.2ポイント上昇した。

6/2 途上国の男女格差是正、経済発展に効果(日経夕刊):世界銀行は、女性の権利や教育水準に熱心な国ほど経済発展を遂げているとする調査報告書を発表した。

6/2 ゼネコン、人員削減なお高水準(朝日、日経):帝国バンクによるとゼネコン100社の従業員数は前年度比5.5%減の約20万2千人で、削減率・削減数とも最も厳しかった前期に次ぐものとなっていることが明らかになった。

6/1 ここが争点・総選挙と経済(朝日):総選挙を控えて、慶応大学清家篤教授へのインタビュー。見出しには「年齢差別の禁止必要」と大きくのってますが、「解雇の自由を認めるべきという意見もある」とその主張を否定することなくすんなり語ってくれてます。典型的な袴の下に鎧がちらほらですね。