吉田ゼミのサーバーの歴史

横浜市立大学商学部時代(1996年10月〜2003年3月)から香川大学経済学部(2004年10月〜)へ

 吉田ゼミは1996年9月末にスタートした。横浜市大商学部では助教授以上がゼミ担当教員となり、ゼミは2年の後期から始まる。私が市大に赴任したのが1995年で、翌年助教授となり、その年の2年生の後期から演習をもつことになった。第一期生は2人。彼らにゼミ生にホームページを作らないかと誘ったのが、1996年の終りから1997年頃にかけてのことである。私自身も96年の夏あたりからホームページを作り始めていた。

 この頃は研究室にコンピュータが1台しかなかった。そのコンピュータ*にWebサーバーソフト**をインストールし、動かしていた。したがって、1台のコンピュータで論文執筆等の日常の業務に従事しながら、Webサーバーも運用しているという状況であった。一応サーバー・ソフトはバックグランドで動かせることになっていたのだが、まだOSレベルでしっかりしたマルチタスクが実現されていなかったため、ホームページにアクセスがあると打ち込んでいた文字の入力が急にストップするなど、笑えない経験もした。ただ当時はまだインターネットもあまり普及しておらず、訪問者数も少なかったのが幸いし、さして問題とはならなかった。
*これがPower Macintosh 8100/100。第一世代のPower Macの最上位機種で、CPUはPower PC601。随分と高価なマシーンだったが、大学の赴任時の研究費のほとんどをこれに費した(モニター、プリンターを含め50万円程。当時の研究費は確か30万円弱だったが、赴任した初年はコンピューター等の購入のために補助が出ていたので買えたのだった。)。しかし、CPUの切換えに伴ないOSのほとんどがエミュレーションで動作していたこともあって、期待していたよりも速くはなかった。
**WWWサーバーソフトはMacintosh用Quid Pro Quo。このソフトを使いこなすために勉強したのが、福井県立大学の田中求之氏のサイト。そこで知った、あるプログラマーの「私の理想とする世界、そこではネットワーク上のすべての個々のノードが Web サーバーを走らせているんだ。」という言葉に共鳴した。久方ぶりに氏のサイトを訪ねてみたら、いまだ当時のサーバー(Macintosh LC 475)で運営されているとのこと。感動ものだ。
 ゼミ生用の独自サーバーを立ちあげたのが1998年6月頃。古くなった院生用のMac IIci*が処分されそうになっているところを救出したのだ。これにはNetBSDというフリーなUNIX系のOSを導入してみた(当時の導入記)。当時、Mac用のNetBSD入門書も出はじめており、それらを片手に興味本意でインストールや設定を行ったが、初めてのUNIXの導入・運用に悪戦苦闘した。ソフトのコンパイルなんてのも経験したのもこの頃が最初。わけもわからず本に書かれた通りにコマンドを打ち込み、Apacheを導入。設定にも四苦八苦した。そんなこんな立ちあげたサーバーだったが、今でも思い出されるのは、ゼミ二期生のH君がWarezなファイルを大量にサーバに置こうとしていたことや、三期生のO君がゲーム系サイトを立ちあげ、卒業までの2年半で数十万アクセスを達成したことなどである。
*Mac IIciは1989年に発売され、我が研究室に来た当時でほぼ10年選手。CPUはモトローラ68030の25Mhz。それでも普通にWWWサーバーとして使う分には問題なかったが、cgiの処理などはかなり遅かった。ただ、14inchモニターとの組み合わせは非常に美しく、引退後も私の研究室に飾られていた。

 ゼミ生も増え、ハードディスクも手狭になってきたので、2000年秋頃にはIIciに引退してもらった。既に日常業務からは引退していたPowerMac8100にMkLinux*をインストールして、ゼミ生用のサーバーとしてみた。しかし、ハードとの相性もあってか、このOSは安定しなかった。そこで、PM8100とMkLinuxとの組み合わせは早々に断念し、商学部計算機委員会で管理していた使われなくなっていたMac**を借り出し、Vine Linuxを導入することにした。この組み合わせはなかなか安定していており、結局、退職時までこのサーバーで運用していた。
*MkLinuxはAppleが公式に開発していたMach Kernel技術を用いた変わりだねLinux。PM8100など第一世代のPowerMac(所謂NuBus Mac)を対象に開発が開始されたが、その後対象機器を広げていった。第一世代PMの対応は徐々におろそかにされていったようでも、落ちないことが利点とされるUnix系OSだが、我研究室では随分と落ちるようになり、引退してもらうことにした。
**これが三代目サーバー・マシーンとなるPower Macintosh 9500。第二世代のPower MacでCPUはPower PC 604。96年頃に発売されたものだが、1〜2年しか違わない私のPM 8100とは比べものにならない位速く、発売当時は随分と悔しい思いを味あわされた。そのMacがお古として研究室に来たのであった。因みにこのMac、当時の学部長が早稲田に転出したため計算機委員会管轄に回されてきた。あの先生、元気かな。

 2004年4月に香川大学に転任したが、当初はゼミ生用のサーバーを立ちあげることができなかった。研究室にはパソコンが1台しかなかったためだ。それも前の大学で償却も終っているので好きにしてよいと言われ、一度は捨ててこうようとしたMac*であった。それでも、もしもの時のためにと香大に連れてきたのが幸いした。香大赴任後に注文したコンピュータの出荷が遅れに遅れ、日常業務でそのMacを使わなければならない日々が予想以上に長引いたためである。メモリー増設、HDの強化などの延命措置を施すが、しかしそれでも最新のOSでは日常業務も一杯一杯。このためバックグランドでサーバーを動かす気にはなれなかった。

*このMacが第四代目のサーバーとなったPower Macintosh G3/300。1999年頃購入。文字通り第三世代のPower PCがCPUで、当時の最上位機種だった。4〜5年に一度まわってくるコンピュータ購入用研究費補助で購入した。2003年2月頃にPower Mac G4/1Ghzを購入するまで日常業務のメイン・マシーンとして活躍してくれていた。
さて、市大で最後のMacを買った頃、既に市大で大学自治解体は進み、事務との関係は最悪となり、教員への嫌がらせが横行するようになっていた。通常の研究費を使い切れなかった教員には理由書を提出を求めることが、年度末近くになって突然アナウンスされたのも、その一つである。この年は研究費が大量に余っており、これはやばいということで急遽購入を決めたのがPMG4/1Ghzであった。だが研究費は消化できず、結局理由書を提出しなければならなかった。
この年、研究費が大量に余っていたのには理由がある。それも同じく事務方による学部自治破壊に基づくものであった。かつて市大商学部の教授会では研究費の平等配分を目指してきた。市大商学部の研究費は、文系教員としてほぼ同じような研究であるにもかかわらず、実験系、準実験系、非実験系にわけられて予算が下りてきていた。かつてはコンピュータを使って研究する教員は限られていたが、現在ではどんな分野もコンピュータを利用するようになっており、この意味で平等配分する必要がでてきていたのである。しかし、そうした実態とはかけ離れて、実験系は100万円強、準実験は60万円弱、非実験は30万円弱と大きな格差がつけられていた。
このため、商学部教授会では系ごとに累進課税的に学部の共通経費分を差し引くことで、平等化が追求されてきた。私は準実験系に属していたが、自分が自由に使える研究費は30万円弱で、非実験系と同じ額にされていた。4〜5年に一度の頻度で、準実験と非実験の教員には学部共通経費の中からコンピュータ購入補助が出されていた。またこれでも不十分だということで、90年代の終り頃には、実験系と準・非実験系の教員がグループを組むことで、その平等化をはかり、研究費が増額となった人たちもいた。
ところが2001年頃から、こうした平等化はまかりならぬというお達しが事務方から出るようになった。研究費支出が目的通りに運用されていないので、適正化する必要があるというのである。このため共通経費部分の削減が突如実施されたのである。この措置により準実験の教員には突然、倍に近い額の研究費が出るようになった。ただ倍になったからといって突然研究費の使い方が変わるわけでもない。そのために、その年は大部分の研究費が未消化となってしまったのである。
他方、その経緯は大学自治の破壊である。特にこの頃は個人研究費の廃止ということまで事務方は言い出していた。一時的には研究費が増えたものの、これまで学部自治で営々と構築されてきたルールが事務方の手によって大きく変えられてしまったことで、これからの研究費については不安を抱かせるのに十分であった。まさにこの不安は的中し、現在の市大での研究費は理系、文系とも一率30万円となったと聞いている。いったいなんたることか。
 その年9月の終りになってようやく注文していたMacが入手できたので、G3にはゼミ生用のサーバーにまわってもらった。クリティカルな業務に用いられているわけではないので、特に問題もなく働いてくれていた。だが、05年の9月になって、経済学部で設置していたMacルームが突如解体。これに伴いPowerMac G4/800が大量に放出されることになり、そのうちの1台をFAで指名し、新サーバーとして運用することになった。これが現在稼働中のサーバーであり、吉田ゼミのサーバー・マシーンとしては5代目にあたる。ゼミ・サーバー開設10周年はこのMacで迎えることになりそうだ。
 2007年9月25日。前日、学校は停電だったので、出校してサーバーの電源を入れるも立ち上がらず。起動ボタンを押しても、チラっと輝くのみで起動音が出ない。停電前にきちんとサーバーを落していなかったことが悔やまれる。しかたがないので、急遽、某先生から譲っていただいたPower Book G3 (通称Pismo)にサーバを変更する。HDの要領が6Gなのでとりあえずのリリーフ登板。どこかによいコンピュータが落ちてないかな。
 本学に赴任した年に40万円近くを出して買ったPowerMacG5もさすがに4年も使うと古さは否めず、起動に失敗することもしばしば。そこで研究室に新しいMacBookを導入し、クラムシェルモード*で使うことにした。研究室には、もう一台PowerBookG4(12inch 1.5Ghz)があったのだが、電池切れのためモバイル的な用途もできなくなっていたので、今回サーバーとして復活させることにした。2009年2月2日、無事PowerBook G3からPowerBook G4にサーバーを交換。引退となったPowerMac G5をサーバーにしてもよかったのだが、ファンやハードディスクの音がうるさく、電力も喰いそうなのでPowerBookに落ち着いた。
*MacBookの蓋を閉じて、デスクトップマシーンのようにモニターや外部キーボードに接続して使うこと。
 このところ、Power Book G4の調子がおかしい。ハードディスクから異音が聞こえ、データのやりとりも遲くなることがある。そのため、2009年5月11日、Power Mac G5にサーバーを変更。PowerMac G5に火を入れるのは久方ぶりで無事起動できるかどうか心配だったが、今のところ、ハードディスクのアクセス音やファンの音もせず快適にサーバーの役割を果してくれている。
 Power Mac G5の調子が悪い。思えば、普段の業務に使っていた時もちょこちょこ勝手に落ちていたりしていたので、ハードディスク等が寿命にきているのかもしれない。折角、先週末を使ってOSをLeopardに上げたのだが、無駄であった。2009年10月28日、やむなくサーバーを、使わなくなっていたMac miniに交代。CPUのダウングレードだが、やむなし。G5ファンの音が五月蝿かったが、ミニだとそういうこともなくエコにもよいかも。
 2010年5月4日、今さらながらMac miniのOSを10.5にアップグレード。実はサーバー交換の際にアップグレードしておきたかったのだが、miniのDVDドライブがDVDメディアを認識しなくなっておりできないでいた。もう無理かと諦めていたのだが、この連休中に買ったDVDレンズクリーナーを試したところ、無事に復活させることができた。ちょっと感動。その勢いで、OSのアップグレードへ。ただ10.4から10.5へのアップグレードではApacheのセッテイファイルの場所が変っており、元通りに運用するためにはちょっと難渋した。
 2011年3月19日、Mac mini serverの稼動開始。Mac mini G4のレスポンスがちょっと厳しくなってきたので、特別教育研究経費の予算で買ったもの。インターネットサーバを立ち上げて15年になるが、サーバ用途でコンピュータを買ったのが今回が初めて。ただMac OSX serverを使うのは初めてだし、情報も少なくちょっと不安。CGIが動かないなど、今後いろいろと調べなければならなそうである(CGIの件は何とか解決)。

 

吉田ゼミの歴代サーバー
運用時期 ハード OSWWWサーバー運用場所
1996年7月〜1998年6月

Power Macintosh 8100/100

Mac OS 7〜8
qpq
横浜市立大学商学部
吉田研究室(商文棟)
1998年6月〜2000年9月

Macintosh IIci

Net BSD/mac68k
apache横浜市立大学商学部
吉田研究室(商文棟)
2000年9月〜2000年11月

Power Macintosh 8100/100

MkLinux
apache横浜市立大学商学部
吉田研究室(商文棟)
2000年11月〜2004年3月

Power Macintosh 9500/120

Vine Linux/PPC
apache横浜市立大学商学部
吉田研究室(商文棟)
2004年10月〜2005年9月

Power Macintosh G3/300

Mac OSX 10.2
apache香川大学経済学部
吉田研究室(3号館)
2005年9月〜2007年9月

Power Macintosh G4/800

Mac OSX 10.3
apache香川大学経済学部
吉田研究室(3号館)
2007年9月〜2009年2月

PowerBook G3/500

Mac OSX 10.4
apache香川大学経済学部
吉田研究室
(3号館、08年7月より7号館)
2009年2月〜5月

PowerBook G4/1.5Ghz

Mac OSX 10.4
apache香川大学経済学部
吉田研究室(7号館)
2009年5月〜2009年10月

PowerMac G5/Dual 2.5Ghz

Mac OSX 10.4
apache香川大学経済学部
吉田研究室(7号館)
2009年10月〜2011年3月

Mac mini G4 1.5Ghz

Mac OSX 10.5
apache香川大学経済学部
吉田研究室(7号館)
2011年3月〜

Mac mini server
Intel Core2Duo 2.66Ghz

Mac OSX server 10.6
apache香川大学経済学部
吉田研究室(7号館)