III. 役人という病

市大の状況が悪化していくなかで、どんどん横暴になっていく職員の実態を、ここではランダム(=思い出すまま)につれづれと書いていくことにしたい。

1. 企画課職員からの依頼

 02年度は市大のターニーング・ポイントとなった時期であった。こわ面のi総務部長の号令下に、市大の自治破壊が進んだ。市長交代を契機とした「あり方懇」の設置、事務機構の改悪、教員昇進の妨害など、その後の市大の行方を左右するような事態が相次いだのである。
 教員の昇進の妨害とは、ある教員(x氏としておこう)が教授会の昇進審査をパスしたが、i総務部長が学部間での昇進基準に差があるのは問題だといういちゃもんを付けられ、昇進が妨害された事件である。教員の昇進に総務部長は関与する権限はない。学部教授会の審査を経て、学長が市長に上申することになっていた。しかしその上申という事務手続きをサボタージュしたのである。何ら権限を有していない人間の横暴なのだから、学長も断固とした態度をとれたはずだが、しかし例の弱腰で何ら積極的な対応をすることもせず、結局、本人にはまったく瑕疵がないにもかかわらず、x氏は4月に昇進できなかった。
 そんなことがあって迎えた03年の6月頃だ。私のところへ総務部企画課の職員から内線電話がかかってきた。内容は、ある区の商店街活性化プロジェクトを企画してもらいたいという依頼であった。正直困惑した。私自身は人事労務や労働系が専門で、決して商店街活性化といったようなプロジェクトとは無縁である。大学には他に適任者が沢山いるはずであるという疑問をぶつけると、学生さんたちと随分と動いているということで学部の事務から先生を推薦されたとのことであった。
 そう言ってくれるのはありがたいのだが、何ぶん専門が随分と異なっているのでやはり難しいなどと躊躇していると、そいつは何のはばかりもなく「なお、この話は、市大から泉区長に転任したi元総務部長が、大学のことを考えて依頼してきたことなので、是非引き受けてもらいたい」と言った。そもそも引き受けるつもりはなかったが、これで絶対に引き受けられなくなった。大学を破壊して出ていった奴の依頼を、はいそうですかと引き受けるほどの御人好しではない。
 協力したいのはやまやまだが、しかし、依頼されていることと自分の専門があまりにもかけ離れているので、やはり引き受けることはできない旨を伝え、しかし、ただ断わるだけでは悪いので、適任と思われる人を紹介しておいた。相手は戸惑って、そそくさと電話を切った。なにせ私が推薦したのはx氏だったからだ。単に嫌がらせでx氏を紹介したのではない。本当にx氏が適任であったのだ。最も適した人であるはずなのに、事務方の理不尽なやり方で依頼することができなくなっていたのだ。
 人を呪わば穴二つ。教員を蔑ろにする組織になることで、教員から協力を引き出せない組織へと変っていったのである。

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